研究概要 |
先に申請者らは、ストレス応答性のMAPキナーゼシグナル伝達系であるJM(/SAPK系の生理的役割を明らかにする目的で、本シグナル系を正に制御する活性化因子SEK1/MKK4や、MKK7ノックアウトマウスを作出し、JNK系が肝芽細胞の増殖・生存など肝形成に必須の役割を果たしていることを明らかにした。また、これまでに神経変性疾患DRPLAの原因遺伝子の産物がJNKの基質となり活性制御を受けていること、また、好中球の活性酸素産生時にアダプター分子であるGab2がERKによってリン酸化され、リン脂質キナーゼであるPI3キナーゼの活性調節に関与することを見い出している。本年度は、SEK1やMKK7を欠損する胚性線維芽細胞の解析から、JNKがc-Junのリン酸化を介して細胞周期G2/M期促進や細胞老化抑制に関与することに加えて、細胞の状態に応じてJNK系のアポトーシス誘導能に変化が生じることを見い出した(Nat.Cell Biol.6,215-226,2004,J.Biol.Chem.279,1621-1626,2004,J.Biochem.[review]136,123-126,2004)。これらの成果は、JNKがc-Jun以外の標的の存在を強く示唆し、本研究目的の一つを達成したと考えられる。一方、放射標識された非天然型のATPアナログの合成とこれをリン酸化反応の基質として利用可能な点変異MAPキナーゼを作製することによって、変異MAPキナーゼだけが標的分子に放射標識されたγ位のリン酸基を転移できるような実験系では実用化に向けて、高非活性のATPアナログの合成や細胞膜を透過しにくい非天然型ATPアナログを細胞内に導入する条件が検討されている。
|