熱帯地域の植物から単離されたビンカアルカロイドであるコノフィリンは、左右2つのインドール部分がフラン環で結合した特徴的な構造を持ち、癌遺伝子rasを過剰発現した癌細胞の形態を変化させる活性、および膵臓癌細胞の形態を変化させHGFの存在下においてインスリンの産生を誘起する活性を示す。コノフィリンの前例のない骨格の合成法を開拓し、これをリードとした各種類縁化合物の合成化学を展開し、膵臓細胞にインスリンを産生させる能力を獲得させるという新たな作用機作に基づく新規糖尿病薬の分子設計を目的とし、本研究を行った。 本研究では、左右2つのインドール骨格からなるコノフィリンの構造を構築するための合成ルートの開拓、それを通じてコノフィリンおよびその類似化合物の合成法を検討した。 コノフィリンは12個の6員環、5員環、3員環が連なり11個の不斉炭素を含む剛直な構造を持っている。特に、インドールを含む類似的な左右のユニットがフラン環によって繋がった構造は前例がなく、その構築法を新たに開発することが必要である。コノフィリン骨格の合成法の開拓のために、以下のような計画で実験を行った。 フラン結合部の合成法の開発と右側ユニットの合成を目的とし、コノフィリンの左側のインドール骨格に対応するピリジニウム化合物と、右側のインドール骨格のベンゼン環に対応するフェノール化合物のグリニヤール反応剤とを反応させて連結して炭素-炭素結合を形成した。次いでフェノール性水酸基で閉環してフラン連結部を構築し、さらに実際のコノフィリンへと拡張するため、Fischerのインドール合成法を適用して右側ユニットを合成した。
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