研究課題
萌芽研究
中枢性変性疾患はいまだ治療法のない疾患群である。その治療法確立のためには治療効果のある分子を脳にデリバリーする必要がある。本研究は臨床応用な中枢への遺伝子導入法の開発である。最近では臨床応用可能なベクターとしてAAV(アデノ随伴ベクター)が注目されている。しかし、発現が炎症などの副作用が全くないとは言い切れていない。今回我々は超音波による中枢への遺伝子導入を試みた。投与方法としては大槽あるいは線条体へレポーター遺伝子を注入した。レポーター遺伝子はマイクロバブル(オプチゾン)と事前にミックスしておいた。レポーター遺伝子は遺伝子導入後1日後がピークであり1週間でベースラインに低下した。また、レポーター遺伝子の発現部位は注射部位周辺に限局していた。超音波を用いないnakedプラスミドのみの場合に比較し、超音波を用いた場合、10倍の発現効率が得られた。また、炎症およびBBB(血液脳関門)の破綻は見られなかった。また、この方法を用いてアルツハイマー病モデルに対して遺伝子治療を行った。我々は肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療に注目することにした。なぜならば、HGF遺伝子治療は閉塞性動脈硬化症に対して臨床研究が行われていること、HGFは神経細胞に保護的に働くこと、HGFは血管新生促進作用を持つからである。アルツハイマー病マウスモデルとしてAβを脳室内に注入する記憶障害モデルを用いた。行動試験として、短期記憶をみるY-MAZE、長期記憶をみるWATER FINDING TASKを用いた。HGF遺伝子導入した群ではコントロール群に比し、短期記憶、長期記憶ともに改善していた。さらに本年度は脳に加えて脊髄への超音波による遺伝子導入法も開発した。今回得られた結果は超音波を用いた遺伝子導入法が中枢性疾患への応用が可能なことを示している。
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Current Neurovascular Research. 2・3
ページ: 235-247
Gene Therapy 11(20)
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Neuobiology of Disease (in press)
J.Gene Med (in press)