研究概要 |
本調査研究参加者の健康状態を追跡し、平衡機能、転倒および骨折に関連する情報を得て、血中非活性型ビタミンD[25(OH)D]との関連を調査した。平衡機能は重心動揺軌跡長を測定した。ベースライン調査後、1年間の転倒の発生率は73/609(12.0%)、3年間の骨折発生率は42/762(5.5%)であった。重心動揺軌跡長の平均値は2.1cm/sec(標準偏差0.9)であった。平衡機能および転倒に関して、重回帰分析の結果、重心動揺軌跡長は年齢(R^2=0.069,P<0.0001)およびBMI(R^2=0.025,P<0.0001)と有意な関連がみられた。全体として血中25(OH)Dレベルと平衡機能または転倒発生との有意な関連はみられなかったが、血中25(OH)Dレベルの低い(<40 nmol/L)75人のサブグループでの解析では、重心動揺軌跡長は血中25(OH)Dと負の関連がみられた(R2=0.075,P=0.0189)。骨折に関しては、多重ロジスティック解析の結果、中等度の運動をする群の骨折発生率が、しない群と比較して有意に低かった(オッズ比0.42,95%信頼区間0.22-0.85)が、血中25(OH)Dレベルと骨折発生には有意な関連がみられなかった。この関連を見出すためには、今後も本コホートを追跡する必要があると考えられた。総括として、非活性型ビタミンDのレベルと骨折発生に有意な関連を見出せなかったが、非活性型ビタミンDの栄養状態の悪い高齢者は骨密度の低下と平衡機能の低下が確認され、このようなハイリスク集団にはビタミンDの補充が骨密度維持および転倒予防に有用であることが示唆された。
|