研究課題
萌芽研究
1.膜移送欠陥細胞モデルHERGチャネルをHEK細胞に発現させ、c-Src tyrosine kinaseによるチャネル活性の修飾を詳細に検討した。活性型c-Srcの共発現は135kDaの未熟なHERG蛋白の発現増加をもたらし、この効果はherbimicynAやPP2などのPTK抑止剤で抑制された。全細胞電流記録ではc-Srcは電位依存性活性化の脱分極方向へのシフトや活性化の遅延など電気特性を変化させたが、こうした変化からの予測以上に最大電流値は低下した。これらの結果はc-Srcによってチャネルが十分なglycosilationを受けないまま心筋小胞体に保持されてしまう事を示し、これまでに報告された膜移送欠陥を呈するHERG変異と機序を共有していた。本研究ではさらに、HERGチャネルの電気特性の変化がPTK抑止剤の短時間(45分)の投与で解除されるのに対し、膜移送欠陥の解除には24時間と長時間の投与が必要である事が明らかにされ、c-SrcによるHERGチャネルの修飾には異なる部位への複数の燐酸化反応が関与する事が示唆された。2.Herg遮断剤と膜輸送欠陥膜輸送欠陥は種々のHERGチャネル遮断剤によって改善される。HERG遮断剤の一つであるcibenzolineの電気生理学的遮断特性を検討した。cibenzolineは膜電位依存性活性化・不活性化曲線をともに負の方向にシフトさせ、チャネルの開状態に親和性を持つ事が明らかになった。この所見の構造生物学的意義は現在検討中である。3.チャネル機能異常が不整脈発現と関連する先天性心疾患本研究と直接に関係する臨床例として、膜移送欠陥を伴うHCN4チャネル(ペースメーカー電流)及びKCNQ1チャネル(IKs電流)の変異例を発見した。また、不活性化の促進と膜移送欠陥を伴うHERGの新しい変異例1122fs/147を発見した。
すべて 2004
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