研究課題/領域番号 |
16659210
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
白井 幹康 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (70162758)
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研究分担者 |
菅 弘之 国立循環器病センター研究所, 所長 (90014117)
永谷 憲歳 国立循環器病センター研究所, 再生医療部, 部長 (60372116)
西浦 直亀 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 室員 (70132933)
ピアーソン ジェームズ 国立循環器病センター研究所, 心臓生理部, 研究員
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2006年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2005年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 心筋収縮タンパク質 / クロスブリッジ動態 / 放射光 / X線回折法 / 小角散乱 / ナノテクノロジー / 高血圧ラット / 心肥大 / 心筋収縮タンパク / ミオシン間距離 / βアドレナリン受容体刺激 / リアノジン / 細胞内Ca^<2+>放出機構 / 生体内拍動心臓 / ラット |
研究概要 |
平成16及び17年度において、1)丸ごと心臓における最適X線回折像の取得法の確立2)正常及び病的心臓(主に虚血心)におけるクロスブリッジの収縮・拡張中の挙動、特に心室圧-容積関係との対応及び3)β受容体刺激による心収縮性増大と細胞内Ca^<2+>放出機構の関係について基礎的研究を進めた。最終年度である本年度は、これまで確立した心筋タンパク質動態の評価法が、実際の臨床症例で役立つかどうかをより確かなものとする目的で、高血圧モデルラット(SHR)心臓における収縮タンパク質動態の変化を調べた。この研究では、特に、心筋の局所ごとの収縮タンパク機能異常が捉えられるか否かに焦点を当てた。 大型放射光施設SPring-8(BL40XU)で実験を行った。準単色放射光(波長:0.08nm、幅:0.2x0.2mm、X線エネルギー15keV)をラット左心室に当て、心筋の小角散乱をX線イメージインテンシファイアと組み合わせた高速CCDカメラで記録した。麻酔下ラットにおいて、胸壁を部分的に取り去り、コンダクタンスカテーテルとマイクロマノメータを左室に直接挿入し、左室の圧-容積関係とX線回折像の同時記録を行った。回折像には2つの顕著な回折ピーク、(1,0)反射と(1,1)反射があり、心筋収縮・拡張によってそれらの強度は変化するが、心筋運動の両反射強度への影響を取り除くため、(1,0)反射と(1,1)反射の輝度比をミオシンとアクチン間の質量移動の指標として解析した。 SHR(22週齢)の左心室の前壁と後壁の輝度比(1,0/1,1)、左室圧及び左室容積を同時に連続記録した。この週齢のSHRでは、心筋力学的には収縮異常は検出できなかった。しかし、心筋局所では収縮タンパク質の機能異常が検出された。その1異常の進行度合いは心筋局所ごとに異なった。即ち、左室後壁では、正常ラットから得られる収縮・拡張時の輝度比変化と同じパターンの変化が得られたが、前壁では、輝度比変化のパターンに明らかな異常を認めた。その異常パターンは極めて複雑で、収縮期と拡張期に同期した輝度比の変化はまったく消失し、最大質量移動(拡張期輝度比と収縮期輝度比の差)は正常ラットと比べ有意に減少していた。これらの結果は、SHR肥大心臓では、収縮タンパク機能の障害は心臓全体で均一に進行するのではなく、不均一に進行することを示した。従来のSHR心臓のマクロ的な研究では、生後18〜22ヶ月で心機能障害が初めて起こるとされてきたが、本研究によって、タンパク質レベルではもっと早期に障害が起こることが明らかとなった。 本研究で開発された放射光X線回折による生体内拍動心臓での収縮タンパク質動態解析法は、基礎、臨床のいずれにおいても、生理的な心筋局所の収縮機能評価法として、さらには、心臓疾患に対する新薬のタンパクレベルの評価法として、今後ますます重要になると考えられた。
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