研究課題
萌芽研究
狭窄性細気管支炎はウイルス感染、膠原病、慢性過敏性肺炎に代表される間質性肺炎などに伴って発症することが知られている極めて予後の悪い疾患である。近年は骨髄移植や肺移植などの臓器移植後に高頻度におこることからその臨床的な対処が問題となっている。私たちは同系でありながらC57/BL6マウスのGFP発現マウスの骨髄を、全身性に放射線照射をして骨髄産生を抑制した野生型のC57/BL6マウスに移植すると、その末梢気管支周囲に移植した炎症細胞が集蔟することを見出した(Mol Ther,2005)。しかしこのマウスモデルでは気道周囲炎のみで、狭窄性細気管支炎にまでの進行は確認できなかった。このため、さまざまな疾患における気道周囲の炎症発現の解析を試みた。ヒトインフルエンザと現在世界的に話題になっている鳥インフルエンザ(H5N1)のそれぞれの受容体の分布をヒト肺組織の中でみてみたところ、ヒトインフルエンザの受容体は気道壁に分布するものの、肺胞領域にはほとんど認められない。しかし鳥インフルエンザの受容体はそれとはまったく逆に、気道にはほとんど分布しておらず、肺胞上皮細胞を中心として密に分布をみることを明らかにした(Nature,2006)。これはヒトインフルエンザへの感染が気管支の炎症にとどまるのに対して、鳥インフルエンザへの感染は肺内を中心とした炎症を引き起こし、急速な肺損傷を来たす原因を示している。また、狭窄性細気管支炎の病態改善の遅延が、リンパ管分布の患者肺組織における異常が気管支壁の病変の修復をもたらしている可能性に関して、免疫組織染色学的に検討した。その結果、狭窄性細気管支炎の周囲のリンパ管は気道内部に入り込めないことを確認した。またこの傾向は難治性喘息患者肺における気道病変と類似しており、難治化の病態機序を反映しているものと推測された(投稿準備中)。
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