研究概要 |
これ迄に、マウス変異型MAP kinase, ERK2由来9mペプチド(QYIHSANVL)が、マウスH-2Kdに提示されたBALB/cマウス由来肉腫CMS5の拒絶抗原であることを明らかにした。9m認識TCR(Vα10.1及びβ8.3)のtransgenicマウスDUC18より、脾臓CD8陽性T細胞を調製し野生型BALB/cマウスに移入すると、CMS5肉腫の拒絶が可能となる。9m発現CMS5に対する抗腫瘍性免疫応答と末梢免疫寛容を検討するモデルとして、自己抗原として変異型ERK2を発現しているmERK2 Tgマウス(9mTgマウス)を作製し、DUC18脾臓CD8陽性T細胞を移入し、個体内の動態と腫瘍拒絶能の解析を試みた。 (1)9mTgマウスにDUC18脾臓CD8陽性T細胞1x106個を移入すると、day5より全身のリンパ節腫大を認め、day14には縮小する現象が認められた。鼠径リンパ節において9m特異的CD8陽性細胞のフローサイトメトリーでの解析を行なったところ、day7では細胞数の増加を認め、day14には減少した。CSFEラベルされたDUC18脾臓CD8陽性T細胞を用いた系においても,移入早期より著明な分裂、及び増殖が認められた。IFN-γELISPOT法においても同様な結果が得られた。 (2)野生型BALB/cマウスにDUC18脾臓CD8陽性T細胞を移入し、2日後にCMS5肉腫を移植すると、全例のマウスで拒絶可能であった。しかしながら9mTgマウスにおいては全例で拒絶できなかった。9mTgマウスにDUC18脾臓CD8陽性T細胞を移入すると9m特異的CD8陽性細胞は、一過性に増殖するがその後、細胞死もしくはIFN-γの産生を失い、末梢トレランスが成立する可能性が考えられた。腫瘍特異的ではなく全身に発現している自己抗原の場合、能動免疫療法の標的とはなりにくい可能性が示唆された。
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