研究概要 |
FRPの受容体を含めたリガンドのクローニングは,ヒトFRPをbaitとし,前回の実験でFRPが心臓で高発現していた理由より,ヒト心臓由来のcDNAライブラリーをpreyとして,酵母のtwo-hybrid法を用いて行った.クローニングしたcDNAを酵母に再導入し,FRPとの相互作用を確認した結果,重複したクローンを除く10クローンのうち,4クローン:A7,A45,A94,C63が残った.塩基配列解析より,A7は未知タンパク,A45はCD14,A94はヘパラン硫酸プロテオグリカンの中核タンパクであるglypican 1,C63は横紋筋細胞に豊富な巨大繊維性タンパクtitin(connectin)をコードしていた.このうち,A7は未知タンパクであり,構造予想より膜タンパクと考えられたため,5'RACE法により全長6,981bpをクローニングし再構築した.A7の全長cDNA産物は,N末端が細胞質内でC末端が細胞外にあり,3つの膜通過部位を有する膜タンパクであり,N末端にAMP結合部位があることが予想された.A7はRT-PCRでヒト滑膜細胞株SF-1で発現が確認された.glypican 1とCD14は,それぞれendostatinとLPSおよびLPS結合タンパク(LBP)の受容体として知られる.FRPはこれらのタンパクと相互作用する可能性があるが,未知の受容体タンパクであるA7がFRPの特異的受容体であると考えた.このことを確認するため,C末にFLAGタグをコードするA7cDNAをdoxycycline(Dox)制御発現ベクターに入れたpTRE-Tight-A7およびその制御ベクターpTet-Onを滑膜細胞株SF-1に導入しTetOn-SF-1/A7を樹立した.このTetOn-SF-1/A7にDox, FRPおよび抗FLAG抗体Fabを添加し,FRPのシグナル伝達の効果としてc-Fosの発現を定量した.TetOn-SF-1/A7にDoxを添加すると,誘導A7のためFRPのc-Fos抑制作用が増強され,この増強は抗FLAG抗体Fabで阻害された.よってFRPのc-Fos抑制シグナルは主としてA7によって伝達されると考え,A7がFRPの受容体,FRPRと結論した(投稿準備中).また追加実験として、BIACOREを用いてA7とFRPの親和力を定量しているところである.
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