研究概要 |
昨年度の検討により,免疫不全マウス(rag2^<-/->γ-chain^<-/->)皮下への移植により正常ヒト皮膚が長期に渡り拒絶なく生着し,さらに2ヶ月までは移植片の増大傾向(体積で3倍程度まで)を認めることが確認された。そこで,強皮症,ケロイド患者から採取した線維化皮膚組織を用いて以下の検討を行った。 1.In vivoにおける移植片の比較 健常人6例,強皮症患者2例,ケロイド患者4例の皮膚を免疫不全マウスに移植し,2ヶ月以上に渡って観察した。いずれの組織も生着し,2ヶ月までは増大傾向を示したが,サイズに3群間で明らかな差を認めなかった。組織染色(ヘマトキシリン-エオジン染色,マロリー染色)による検討では,いずれの移植片においても線維芽細胞の増殖および細胞外マトリックスの増大がみられ,特に健常人由来でその傾向が強かった。したがって,ヒトのin vivoでは線維化機転が何らかの機序により抑制されており,強皮症やケロイドでこの抑制が障害されている可能性が考えられた。 2.線維化抑制療法のスクリーニング 本モデルを用いて線維化抑制効果が期待されている抗CD40L抗体の効果を検証した。強皮症患者由来の移植片をヒト化抗CD40L抗体(E6040)あるいはヒト化抗RSウイルメ抗体で処置した後に免疫不全マウスに移植した。2週間までの観察では,抗CD40L抗体群で組織の増大が抑制され,組織学的にも細胞外マトリックスの減少傾向が見られた。 現時点で検討症例数は少ないものの,免疫不全マウス皮下へのヒト皮膚組織の移植が線維化抑制療法のin vivoでのスクリーニングに有用な可能性が示された。
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