研究概要 |
色素異常症はじめとする皮膚の発疹の分布に遺伝子のメチル化が関係しているのではないのか、との実験仮説を証明するのが本研究の目的である。具体的な研究対象疾患として、遺伝性対側性色素異常症(以下DSHと略す)を取り上げた。本症は幼少児期に両手背、両足背に粟粒大から米粒大の色素斑と白斑が混在する。この分布がどのような因子によって規定されるのか? DSHの病因遺伝子のDNAのメチル化の部位や程度により、胎生期のメラノブラストがメラニン生成の低下した細胞になったり、逆にメラニン生成の亢進した細胞になったりする。そのようなメラノブラストから増殖したメラノサイトが、結果的に肉眼的に認知できる大きさの白斑になったり、色素斑になったりするのであろう。これを証明するためにはDSHの病因遺伝子である2重鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(以下DSRADと略す)遺伝子において、メチル化がどのようになっているか検討する必要がある。そこでまずDSH患者のDSRAD遺伝子について、その病因となる変異と臨床症状の相関を検討した。その結果、我々が明らかにしたDSRAD遺伝子の20種の変異(ミスセンス変異p.V906F, p.K1003R, p.G1007R, p.C1036S, p.S1064F, p.R1078C、p.L923P, p.F1165S,ナンセンス変異p.R474X, p.K952X、スプライス部位の変異,IVS2+2T>G, IVS8+2T>A、フレームシフト変異p.H216fs, p.K433fs, p.G507fs, p.P727fs, p.V955fs, p.Q600X)と臨床症状の間には明らかな相関は認められなかった。この結果は、我々の仮説としている病因遺伝子のメチル化の部位と程度によるものという仮説を支持するものである。今後、患者のDSRAD遺伝子のメチル化について検討をすすめる。
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