研究概要 |
現在X線診断用造影剤として使用されている非イオン性ヨード造影剤は、様々な副作用があり、特に喘息の既往がある患者への使用は原則禁忌とされている。近年、急速に普及している多検出器CTでは、造影剤を急速に注入して血管の3次元構築など、造影剤を使用して有用な情報を得る検査法が多数、発表されているが、リスク患者では造影剤を使用できないためにこの進歩を享受できない。昨年度、我々は、ヨードよりも原子番号が大きい金属を内包させた金属内包フラーレンを水溶化して、これに代わりうる造影剤にならないか検討した。内包させる元素はランタノイド系のDy,Er,Eu,Gd,Luなどである。Luに関しては、2個内包させたフラーレンも検討した。金属内包フラーレンに水酸基を約40個付加して水溶化させた。これを常温で析出してくるまで溶解させた少量の溶液をCTにて撮影し、吸収値を評価した。結果は20〜120HU程度であり、造影剤として使用するのには全く不十分な結果となった。これは40個も水酸基を付加したにも関わらず、溶解度が非常に低いためである。フラーレンの直径は1nmであるが、やはり分子径が大きいために濃縮できないと考えられた。フラーレンに内包させる金属原子数をさらに増やすことができればいいが、現在の技術では安定的に製造できない。よって、今後、ナノテクノロジーが発展し、分子デザインがさらに容易にできるようになれば、内包させる金属原子数をさらに増やすなどで金属内包フラーレンは有効なX線診断用造影剤になるかもしれないと考えられた。本年度は海外学会にてこの成果を発表した。さらに海外の学会雑誌へも投稿したが、採用され、現在はin pressの段階である。
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