研究概要 |
酸化チタンの光触媒効果を用いる事により、悪臭を軽減しエストロゲン感受性腫瘍である乳癌に対する抗腫瘍効果を検討し、安全で効果的な臨床応用を目指すことを目的とした。しかしながら、酸化チタンの光触媒作用には、エストロゲンの分解効果が報告されており、チタンによる直接的抗腫瘍効果を調べる前に、エストロゲン等の増殖因子が標的分子にした場合意味があるかいなかを明らかにした。 われわれは、昨年度エストロゲン同様の癌増殖因子であるEGFRをまず標的分子に設定し解析をおこなった。EGFRはその突然変異の有無により、阻害剤gefitinibに対する感受性が異なることを明らかにした(Nagahara H, et al. Clin Cancer Res 2005, Mimori K, et al., Clin Cancer Res 2004)。同様に乳癌においてもEstrogenを標的分子とした場合、症例によって感受性や治療効果が異なる可能性を明らかにした(投稿準備中)。 本年度われわれは、個々の乳癌症例の有する進展(転移)関連遺伝子群を明らかにして、将来的にチタンによる治療対象となる標的分子の絞り込みを行った。乳癌5症例における原発巣、正常乳腺、転移巣癌細胞よりLaser microdissectionにて目的細胞のみを採取。それぞれよりmRNAを抽出しmicroarrayを実施した。その結果、転移癌細胞において過剰発現している遺伝子として、a disintegrin and metalloproteinase domain 9 (ADAM-9), B cell lymphoma 2 (BCL-2), early growth response-1 (EGR-1)などを認めた(Mimori K, et al. Clin Exp Metastasis 2005)。今後、チタン光触媒による抗腫瘍効果がこれらの遺伝子群に対して発揮されるかいなかを明らかにした。
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