研究課題
萌芽研究
【背景】肝の阻血再灌流障害の発生機序として、1980年代から活性酸素群が注目されている。これらの活性酸素群の生成に関してはいくっかの反応系が知られているが、阻血中のATPの分解によるHypoxanthineやXanthineの上昇とXanthine DehydrogenaseのOxidaseへのConversionを母地として発生する系が重要視されている。ATPの代謝産物であるアデノシンはアデノシン自体が持つ血管拡張作用の他に、High Energy Phosphatesのsubstrateとしての役割も有しており、これらの作用により近年、内因性アデノシンを増強させるnucleotide transport inhibitor等は臓器の阻血-再灌流障害の軽減に強力な作用を有することで注目されている。そこで、本研究はアデノシン関連物質を応用した安全な肝切除術の確立、肝移植におけるグラフト機能不全の改善、新しい臓器保存液の開発、あるいは多臓器不全の治療法の確立などを目的として行われた。【方法】ビーグル犬を使った2時間の完全肝虚血モデルを用いて、代表的な抗血小板薬であるジピリダモール(DYP)とアデノシンA_1リセプターのアンタゴニストであるKW3092[8-(noradamantan-3-yl)-1,3-dipropylxanthine]の効果を検討した。【結果】DYP投与群はnucleoside transport inhibitorの一つとして組織中のadenosine濃度を高める一方、phosphodiesterase inhibitorとしても虚血・再灌流障害を軽減し、動物生存日数の有意な延長を認めた。また、KW3092投与群は肝組織中のcAMPの上昇を認め、虚血・再灌流障害を軽減し、同様に動物生存日数の有意な延長を認めた。【まとめ】アデノシン関連物質は肝切除術、肝移植術、臓器保存における肝虚血-再灌流障害を軽減させ臨床における患者の安全性を高める効果を十分に期待できるものであると考えられた。また、これらの研究成果は2編の論文として報告された。
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Journal of surgical Research 印刷中(accepted)
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