研究概要 |
前年度にマウス同種心移植モデルにおいて,LOX-1が同種免疫反応により移植後早期には血管内皮にまた晩期には心筋において主に発現誘導されることを明らかにした.本年度はドナー心としてC57BL/6マウスの野生型(WT)とLOX-1ノックアウトマウス(KO)を用い,BALB/cレシピエントマウスへ異所性同種移植(各10例)を行い,生着期間の比較と病理学的検討を行った. WT心では心拍動は徐々に減弱し7〜12日目で全例消失(平均:8.9日)したが,KO心では生着期間が有意に延長し(最大60日まで観察し平均:20.4日),2例は60日の時点でも明らかな拒絶を認めなかった.病理学的に経時変化の検討を行うと,WT心では血管周囲の著明な細胞浸潤に引き続き血管内皮の変性・脱落,冠動脈の内腔狭窄が進行し,概ね10日目までに太い冠動脈においても内腔が閉塞した.一方,KO心ではWT心と比べ細胞浸潤は軽度で,血管内皮や冠動脈の変化の進行も有意に遅延した. 以上より,同種免疫反応により発現誘導されたLOX-1は,移植心での細胞浸潤や冠動脈の閉塞進展に関与し,LOX-1の発現を制御することで同種移植心における慢性拒絶の進行を抑制できる可能性が示唆された.
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