研究概要 |
リラキシンは妊娠子宮頸管熟化作用や子宮収縮抑制作用を有することがマウス等で解明されてきた。ヒトでは、リラキシン血中濃度は妊娠初期にピークを示すが、その生理作用は明らかでない。2002年にリラキシン受容体(LGR7・LGR8)が発見され、LGR7とLGR8のヒト胎盤での発現が確認された。そこで本研究では、リラキシンの妊娠初期絨毛外トロホブラスト(extravillous trophoblast:EVT)の浸潤能に及ぼす影響をMMPとTIMPの発現動態から検討した。まず、インフォームドコンセントを得て採取した妊娠初期絨毛組織から、当研究室で確立された酵素処理と遠沈濾過法(JCEM 2004)にてEVTを分離し、培養した。EVTにおけるリラキシン受容体の発現はRT-PCR法とimmunoblot法で検討した。培養48時間後EVTの無血清培養系にrecombinant H2リラキシン(rH2)を0.03〜3ng/ml添加し、rH2添加24時間後のMMP-2,-3,-9mRNAとTIMP-1 mRNA発現に及ぼす影響をrealtime RT-PCRで検討した。その結果、妊娠初期絨毛EVTにおけるリラキシン受容体の発現がRT-PCR法とimmunoblot法で確認された。rH2添加によって濃度依存性に培養EVTでのMMP-2,-3,-9mRNA発現が増加し、TIMP-1mRNA発現は逆に低下することを認めた。これらの知見より、リラキシンは妊娠初期EVTにおいてMMP-2,-3,-9発現の促進とTIMP-1発現の抑制を介してEVTの脱落膜間質浸潤を促進することが示唆された。
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