研究概要 |
口唇裂、口唇口蓋裂、単独口蓋裂は先天性の多遺伝子異常であると分類されている。非症候群性の口唇口蓋裂または、単独口蓋裂は、口唇口蓋裂全体の60%を占めるとされている。これら疾患は、歯牙の欠損、鼻咽腔の閉鎖異常を認め、ほ乳障害を来たし、顎発育異常と言語遅滞を招く。これまでに口唇口蓋裂または、単独口蓋裂の責任遺伝子は同定されていない。その中で、RYK (Receptor related to tyrosine Kinase)は糖タンパクであり、オルファン受容体で、機能はよくわかっていない。RYK,EPHB2,EPHB3遺伝子は口唇口蓋裂または、単独口蓋裂の候補遺伝子である。RYK欠損マウス及びRYK遺伝子と関連するEph2/Eph3遺伝子の二重ノックアウトマウスは口蓋裂となる。RYK,EPHB2,EPHB3遺伝子検索を日本人及びヴェトナム人の口唇口蓋裂また単独口蓋裂からの血液を解析した。また、一塩基多型法を用いて、症例対照の伝達不均衡テストも実施した。結果、一例のヴェトナム人口唇口蓋裂患者から1355G>A(Y452C)変異をRYK遺伝子中に発見した。この変異は他のヴェトナム人/日本人/白人の1,646例(354例の患者を含める)からは見いだされなかった。NIH3T3細胞を用いたコロニー形成実験では、この変異型RYK遺伝子をトランスフェクション法で導入すると、タンパク活性を有意に低下させたため、本変異はRYk遺伝子発現変異に関与する事が判明した。3個人の一塩基多型を有する症例対照研究、伝達不均衡研究では口唇口蓋裂との関連は日本人患者で見いだせなかった。またEPHB2,EPHB3遺伝子は全く変異なかった。 135G>A遺伝子の欠失変異は、ヴェトナム人患者の口唇口蓋裂の一塩基多型のまれなハプロタイプであり、日本人の口唇口蓋裂、単独口蓋裂も同様であることが示唆された。
|