研究概要 |
骨欠損部補填物や骨再生用足場材料としてバイオセラミックが応用されているが,任意の形状の欠損部補填物や足場材料にバイオセラミックスを成型することは容易ではない.より効率的な自由形状の造型法として3D Printingに代表されるRP法は極めて有望である。しかし,市販の3D Printing装置は石こうを材料としておりバイオセラミックの代表であるアパタイト(HAp)の造型は行えない.しかし,石こうは骨欠損部充填材料として用いられ,リン酸アンモニウム処理でHApに転化することも可能である.そこで,市販の3D Printing装置(Z403,ZCorp)を用い,普通石こうを造型粉末として用い,足場材料として応用することを考慮してマクロ孔構造を持つ試料を3DP法によって造型した.そして,それをリン酸アンモニウム処理して,HApへの転化を試み,X線回折により検証を行った.その結果,造形後の石こう二水塩の試料を処理した場合は,そのピークが残り,ほぼHApに転化するのには12時間を要した.一方,造形後加熱処理して半水塩とした石こうでは処理4時間後にはほとんどHApのピークになった.半水塩の溶解度が二水塩より高いことまた、造形体が多孔質であることがHApへの転化を促進したものと考えられる.しかし,造形体圧縮強度は1MPa程度と低かったので,加熱焼結による強度の向上を試みた.1150℃で3時間焼結したところ,強度が倍の2MPa程度に増加したが,X線回折の結果HApはβ-TCPのピークに変化していた.一方,純粋HApをこの条件で熱処理してもβ-TCPには変態しなかった.これは,試料中に残留したリン酸アンモニウムによりPの濃度が増加し,Ca/P比の低いβ-TCPに変態したためと考えられ,本方法で生分解性の点でHApより優位なβ-TCPに容易に変態させることができることもわかった.
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