研究概要 |
口内法X線写真から骨梁面積とフラクタル次元を求め,ヒト海綿骨の力学的特性と皮質骨の厚さを基盤とする新しい定量的骨質評価法を確立することを目的として,16年度は,これまでの研究で動物で得られた骨梁面積とフラクタル次元から海綿骨の弾性係数を算定するための予測式を用いて,ヒト海綿骨の骨量および骨梁構造を反映した弾性係数の重回帰式を得た。これを用いて,ヒトの海綿骨における骨質の標準域を設定した。さらに本年度は,大学病院・口腔インプラント診療科にて撮影した口内法X線写真から無歯顎部相当部位の,皮質骨の厚みに関しての標準値を求め,これらを用いて,口内法X線写真により得られた情報から,これまでは困難であったヒト海綿骨の力学的特性と皮質骨の厚さを元にした骨質診断を行い,新しい評価基準として4種の骨タイプ,すなわち,タイプA:密な海綿骨の周囲に厚い皮質骨,タイプB:疎な海綿骨の周囲に厚い皮質骨,タイプC:密な海綿骨の周囲に薄い皮質骨,タイプD:疎な海綿骨の周囲に厚い皮質骨に分類できることを示した。これらのことから,従来行われてきた定量的骨質評価法では得られなかった,骨梁構造や,骨の力学的特性を含む骨質評価を,歯科で最も普及している口内法X線写真を用いて,歯科臨床医が簡便にかつ正確に行うことが可能となった。 今後さらに,この評価法を用いて,インプラントの予後経過の観察,骨粗鬆症の診断への応用などを検討して,歯科のみでなく医科分野での摘要の拡大も検討していく予定である。
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