研究概要 |
今年度の検討においては、Ku70、Ku80ならびにDNA-PkcsのsiRNAを作製し、ノックダウンした細胞における放射線感受性について検討を加えた。siRNAによるノックダウンではKu70,DNA-PKcsによる良好なタンパク発現抑制が得られたが、Ku80においては良好な抑制結果を得られなかつた。口腔癌の放射線照射後には、DNA修復系であるKu70の発現が誘導されるが、siRNAによるノックダウンでは、その発現増加も有意に抑制された。 そこで、良好な抑制効果が得られたKu70のノックダヴンにより細胞増殖、放射線増強効果における影響を検討した。その結果、ku70のノックダウンにて、各細胞(HSC3,SAS-neo(野生型p53),SAS-mtp53(変異型p53))において、約15-25%程度の細胞増殖抑制効果が得られた。「さらに、放射線との併用においては、コントロールに比べ、約50-60%の細胞増殖抑制を示し、感受性の増強が示唆された。これらのKu-70のノックダウンした細胞においてはp53の異常に関係なく、G2M期への停止とアポトーシスへの移行を認めており、Ku-70のノックダウンが、放射線照射によるDNA損傷に対するDNA修復系とアポトーシス誘導経路の両経路に作用して、細胞増殖抑制ならびにアポトーシスの誘導に関与し、放射線照射による抗腫瘍効果を増強している可能性が示唆された。 以上の結果は、ku-70を分子標的とした放射線感受性増強が、実際の口腔癌治療に応用できる可能性を示唆するものであると考えられた。
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