研究概要 |
前年度の課題であった組織から粘膜上皮細胞を単離する場合の細菌汚染及び単層培養による口腔粘膜上皮細胞の安定培養法を獲得することが出来た。口腔粘膜組織から血餅を十分にとること、ゲンタマイシン/ファンギソン=12.7mg/ml/192μg/mlの濃度に調整したPBS溶液(組織洗浄溶液)に3時間浸漬し、さらに同洗浄溶液で機械的に洗浄することにより汚染による失敗を10%以下へ抑制できた。この培養システムにて更に線維芽細胞を使用する共培養システムにて実験を継続した。 放射線照射は線維芽細胞の単層培養にて繰り返し照射より単照射の方がより強く影響が現れる事を踏まえ、1)照射再生上皮組織-照射線維芽細胞、2)照射再生上皮組織-正常線維芽細胞、3)正常再生上皮組織-照射線維芽細胞、4)正常再生上皮組織-正常線維芽細胞の組み合わせにて行った。線維芽細胞培養時無血清培地の使用では細胞増殖能が低下することが判ったので、今回は再生口腔粘膜の作成まで無血清培地にて行い、共培養時は10%FBS添加DMEMにて行い、放射線照射は1,2,3,5,8,10Gyの単照射にて施行し照射後24時間に再生口腔粘膜のHE染色にて評価した。結果は1),2)群にて基底細胞の膨化と脱核を見た一方で3)群では特に変化を見なかった。培養液上清でのIL-1,8ELISAでは2),3)群で照射強度に比例して増加する傾向が見られたが1)群では有意な変化を見なかった。MTTアッセイでは1),2)群にて細胞増殖能の低下を見たが、他の群では有意な差を得られなかった。 今年度では上記した結果まで得ることが出来た。この結果から粘膜上皮ー粘膜下では放射線による細胞障害の影響が顕著に出、特に最初に障害を受けるのが粘膜上皮であることが判った。また、この培養システムがIn Vitro放射線障害モデルとしてある程度有用であることが示唆された。
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