研究概要 |
歯周疾患は治療を行わなければ歯を失う重大な疾患である.従って,歯周疾患を早い段階で発見することが重要である.本研究の最終目標は,携帯付きカメラ等から送信された歯周画像を口腔評価指数(ORI)に基づいて評価するコンピュータ支援診断システムを構築することである.昨年度は,歯科専用口腔撮影カメラで撮影された歯周画像の歯周状態を定量的に解析する手法を提案した. 本年度は,ORIの判定が,非常にきれいなもの(ORI値:+2)5症例,きれいなもの(ORI値:+1)6症例,どちらとも判断しがたいもの(ORI値:0)8症例,きれいでないもの(ORI値:-1)4症例,きたないもの(ORI値:-2)7症例からなる30人の歯周画像を用いて開発を行った.歯周状態を判断するために,歯垢量と歯肉の形状に着目した特徴量を計測し,それらを入力とした判別分析によって歯周状態の良否を判別した.良好群(ORI値が+2,+1の症例)の正答率は90.9%(10/11),不良群(ORI評価が-2,-1の症例)の正答率は100%(11/11)の結果を得た.また、歯科医が「+」か「-」か判断しがたい症例(ORI値:0)は,本手法でも"判断しがたい"という結果を得た.その結果,歯肉の健康状態,口腔清掃状態を評価するために有用であることが示唆された.本手法の問題点としては,レジン修復などの結果,年月が経ち歯が黄色に変色した部分を歯垢と判断してしまうことである.これらの誤検出は,システムに対する歯科医の信頼を損なうことになるため,今後さらに改良していく必要がある. 実用化に向けての今後の課題としては,携帯カメラの特性や照明条件による色の違いを補正する手法の開発や,より多くの症例を収集し,評価することが必要であろう.
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