研究課題
若手研究(A)
今年度の研究においては、昨年度までに提案した輻輳制御手法の性能評価を実装し、実ネットワークにおける性能評価を行った。提案方式は、開発した高速ネットワークにおける計測手法を用いて、利用可能帯域および物理帯域を取得する方式と、提案手法を組み合わせ、提案手法が1Gbpsを超えるネットワークにおいて高いスループットを得るものである。提案方式が持つウィンドウサイズ制御のアルゴリズムは、帯域に関する情報を用いることによってウィンドウサイズを適切な値にすばやく調節すること、および他のコネクションが競合する際に公平に帯域を分配できることを目的として設計している。そのために、数理生態学において生物の個体数の変化を表すモデルとして有名なロジスティック増殖モデル、およびロトカ・ヴォルテラ競争モデルを適用した。これらのモデルをTCPのウィンドウサイズ制御へ適用するために、生物の個体数をデータ転送速度に、個体数の収束値である環境容量を物理帯域に、および種間の競争を同一リンク上の複数コネクションの競合にそれぞれ変換した。本年度の研究では、研究室内の小規模実験ネットワーク、また、大阪・東京間および大阪・米国カリフォルニア間の公衆インターネット環境を用いて、データ転送実験を行った。その結果、インライン計測によって正確な利用可能帯域の値が得られる場合には、低速・低遅延環境においても十分な性能を発揮できること。また、高速・高遅延ネットワーク環境においては、計測精度が低下したとしても、従来手法に比べて最大で100%のスループット向上を達成できることがわかった。
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