研究課題
若手研究(A)
低温溶融ガラスとは数百度以下で軟化するガラスの総称であり、一般的に鉛含有ガラスがその代表例として挙げられる。低温溶融ガラスは接着剤や封着材として多く用いられるだけでなく電子デバイスの絶縁保護や接着などにも用いられており、現代社会において欠かすことのできない重要な基幹材料の一つである。我々は最近、無溶媒下における新たなガラス作製法として"無水酸塩基反応法"を報告している。原料に主にリン酸とクロロシランを用い、無溶媒下において出発原料の混合物からガラスを直接合成する手法である。この手法の大きな利点は、溶媒や触媒が介在しないため、均一で成形性のよい緻密な透明ハイブリッド材料を得ることが可能である点であり、フォトニクス材料としての応用が期待される。本年度は、NMRを用いたリンの局所構造解析により、無水酸塩基反応によるガラスネットワーク形成機構の解明、ガラス安定構造解析を主な研究対象とした。実験に用いたガラス系は、有機修飾ケイリン酸主鎖からなるハイブリッドガラス系である。本ガラス系も我々の研究グループにより新たに発券された新規ガラス形成系である。31P-NMR測定結果より、ケイリン酸主鎖形成に及ぼす有機官能基依存性を詳細に解明した結果、出発試薬である、リン酸と有機クロロシランのうち、有機クロロシランの感応記の電子供与性とガラス形性に大きな相関があることを見いだした。量子化学計算結果と併せて反応性ラインナップを確立し、以下に示すSN2型共置換反応によるネットワーク形性機構を明らかにした。2H_3PO_4〓H_4PO_4^+ + H_2PO_4^- (autoprotolysis) (1)R_2SiCl_2 + H_2PO_4^- → H_2O_3P-O-SiR_2Cl + Cl^- (2)Cl^- + H_4PO_4^+ → H_3PO_4 + HCl. (3)得られた反応機構に基づいた材料設計により、反応収率100%のガラス系を得ることに成功し、フォトニクスへの応用について検討段階に入っている。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (12件) 図書 (1件)
J.Am.Ceram.Soc 88[6]
ページ: 1591-1596
Phys.Rev.B 71
J.Am.Ceram.Soc. 88(10)
ページ: 2908-2912
J.Ceram.Soc.Jpn, 113
ページ: 259-262
J.Mat.Res. 20[5]
ページ: 1234-1241
J.Jpn.Soc.Powder Powder Metallurgy 52
ページ: 775-780
J.Am.Ceram.Soc (印刷中)
Thin Solid Films (印刷中)
J.Ceram.Soc.Jpn 113
J.Mat.Res. (印刷中)
J.Non-Cryst.Solids 345&346
ページ: 323-327
Mat.Res.Bull. 39
ページ: 121-127