研究課題
若手研究(A)
母体に投与された薬物などの生体異物は胎盤を介して胎児へと移行するため、薬物の胎児毒性を評価する上では、その胎盤透過性を評価することが必要不可欠である。本研究においては、ヒト満期胎盤を用いて、母体側から、ならびに胎児側から、さまざまなプロトコルで薬物の胎盤灌流を行い、灌流流出液中の薬物濃度を経時的にモニターすることにより、薬物の経胎盤透過キネティクスを定量的に評価した。これにより、薬物の胎児移行性を動的にとらえることができようになった。また、ジクロフェナクと単純拡散マーカーであるアンチピリンの胎盤透過性に対する乳酸(MCT阻害剤)の影響を検討したところ、ジクロフェナクの胎児移行性が低下することが示され、胎盤灌流実験とモデル解析の組み合わせにより、薬物の胎児移行に関わる輸送担体の寄与を定量的に評価できる可能性を示すことができた。胎盤中での薬物の代謝については、胎盤ホモジネートを用いたpreliminaryな代謝実験を行ったが、アンチピリンの有意な代謝は検出されなかった。また、ヒト満期胎盤よりトロホブラスト細胞を単離精製し、エストロン硫酸をはじめ、各種物質の取り込み特性をキネティカルに評価することができた。しかしながら、単離した細胞を単層に培養し物質の経細胞輸送を評価する試みは成功しなかった。単離生成したトロホブラスト細胞におけるOATPsの発現の経時変化をRT-PCR法により確認したところ、経日的に発現量は大きく変動したが、その推移は分子種間、ロット間で大きく異なり、一定の傾向を見いだすことはできなかった。
すべて 2007 2005
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Drug Metabolism & Disposition 35(5)
ページ: 772-778
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 315
ページ: 888-895