研究概要 |
モバイルアドホックネットワーク(MANET)上でのモバイルエージェント(MA)を利用したアプリケーションを設計する上で,MAを効率よく巡回させることがアプリケーション全体の効率に直結する.しかしMANETの持つ高度な流動性から,これを安易に実現できない.この問題に対するアプローチとして, 1.ネットワークの状況を常にモニタし近未来を予測するなどして効率の良い巡回経路を発見する. 2.巡回のために利用する情報をできる限り局所化し,変動による影響を受けにくくする. 3.理論的アプローチによりMANETを対象としたモデル上で変動に強いアルゴリズムを開発する. などがあげられよう. 本研究では,1.のために,実ネットワークの診断解析技術の可能性を見極めるべく,ネットワーク診断システムの開発をおこなった.2.のため,局所情報のみを用いた自律分散システムが持つ性質を浮き彫りにするための研究を行った.3.のため,自己安定アルゴリズムおよびその高信頼化技術である故障封じ込めおよび強安定に関する研究を行った. 特に3.については,MANET上に生成木を構成する手法およびそれを維持するための手法を提案した.また生成木上をトークン(MAとみなせる)を効率よく巡回させる手法を提案した.これら二つの手法を合成することで,ある制限の下で効率のよいMA巡回基礎技術として価値のあるものとなると考える.またアドホックネットワークの一形態であるセンサーネットワークについても,MA巡回の必須技術である効率の良い通信を行うためのネットワーク構造化,およびルーティング手法についても提案した. またこれらとは別に,MANET上でのアプリケーションの検討としてグリッド技術の適用についても研究を行い成果を発表している.ただし,これについては明確にアドホックネットワークへの適用が考慮されておらず,今後の更なる研究が必要と考える.
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