研究概要 |
申請時の研究実施計画にもとづいて研究を行った.以下は本年度の研究実績である. 1.ライブラリの改良:前年度までの実験から得られた知見をもとに前年度に実装したライブラリの改良を行った.具体的には,ライブラリの機能拡張と効率化のためのコード改善を行った.まず,本研究の主な部分であるプログラムの表明に関する制御機構の機能を拡張した.これは表明の結果が偽であった場合,一定時間を経過した後,再度プログラムの実行を試みる機能である.このような機能はユビキタスコンピューティング環境のようなコンテキスト(状況)の劇的な変化が起こる可能性のある環境下では非常に重要かつ有効な機能である.本ライブラリにおける表明の制御機構はコンテナとして設計・実装されており,この機能拡張は再実行機能のプログラム・コンポーネントを実装してコンテナにアドインするだけで実現された.また,コード改善としては,ライブラリ全体のリファクタリングを行ってライブラリの実行効率を高めた. 2.メッセージ通信システムの再実装と実験:改良したライブラリを用いてメッセージ通信システムを再実装し,実験を行った.実験の内容はメッセージのオーバーフローなど基本的にはシステムの脆弱性に関するものであるが,前年度とは違い,今回新たに実装した表明に関するプログラムの再実行機能を利用し,単なるシステムの脆弱性を回避するだけではなく,それから柔軟に回復する実験を行った.これは表明に関する制御機構をコンテキスト(状況)に応じて柔軟に変更することを意味しており,安全性を損なうことなくシステムの柔軟性を実現することを目指した本研究の最終目標が達成されたことを示している.しかし,この実験は仮想空間において意図的に創造したコンテキスト内で行われたものであり,ユビキタスコンピューティングの実空間による実証実験の難しさを再認識させられた.
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