研究概要 |
最終年度となる平成18年度では,これまでの研究成果を総括したうえ,今後の展望について考察した. 1.Multi-Master Divisible Loadは,データやタスクの再分散のためのモデルである.このモデルでは,タスクは一様かつ独立で,任意のサイズに分割することができるとする.そして,ヘテロなクラスタシステムの各プロセッサに任意の量(プロセッサごとに異なってもよい)が割り当てられている状態からスタートして,必要ならばタスクの移送を行いながら,すべてのタスクをできるだけ早く処理し終わるようなスケジュールを構成する問題を考える.研究代表者は,研究協力者である富さやかの協力を得て,この問題に対する漸近最適なスケジュールを求める高速なアルゴリズムを開発してきた.ここで「漸近最適」とは,タスクの量が多くなるに従って,近似解と最適解(一般には未知)のスケジュール長の比が1に近づくことを意味している.すなわち,理論的な限界に限りなく近づくことができるという特長をもつ.計算量も少なく,プロセッサ数pに対して,基本的な漸近最適解は0(p log p)の計算量で得られ,得られた解の改良(黄金分割法)も1反復当り0(p log p)の計算量で可能であることを示した.このような少ない計算量は,動的な性能の変化に追従するための再分散・動的負荷分散に必要不可欠なものである.さらに,シミュレーションと実機への実装を通してこの手法の有効性を実証した. 2.上記のMulti-Master Divisible Loadを含む,ヘテロなクラスタシステムに適用可能なタスクスケジューリングアルゴリズムについて,網羅的なサーベイを行い論文にまとめた.この論文はヘテロな計算システムにターゲットを絞って詳細なサーベイを行った点に独自性がある.また,本論文を通じて既存の研究の足りない点を多数明らかにし,今後の研究の方向性を指し示した.
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