研究概要 |
2006年度の我々の研究業績は以下の通りである. 1.光MIN(多重相互結合ネットワーク)の多段結合型Benes(VSB)ネットワークの開発.VSBはN×Nサイズのネットワークに対してO(NlogN)個程度の内部スイッチ素子で構成可能である.また,従来の空間冗長や多段結合技術を組み合わせたクロストークフリーなBanyan型MINと比べて,低ハードウェアコストで実現可能である. VSBではスイッチのステージ数を選択可能なので,柔軟性のある構築が可能である.VSBネットワークに対して,我々はクロストークの起こらない条件の下でO(NlogN)のルーティングアルゴリズムを提案した. 2.大規模な多段結合型banyan(VSOB)ネットワークで高速なコネクション生成についての研究.VSOBネットワークに対する現在最速のルーティングアルゴリズムはO(NlogN)である.4096×4096サイズのネットワークでは,コネクション負荷100%の時にリクエストのブロッキングが2%以上も発生する結果となった.一方で,VSOBネットワークのハードウェアコストを減らすために,VSOBネットワークのプルーニングを提案した,結果としてハードウェアコストを30%も削減し,PFRアルゴリズムを用いた場合,通常のVSOBと比較して同程度のブロック発生率となった.この事実から最適な計算量O(logN)を維持したまま,ブロッキング発生率の劇的な減少が可能であることが分かった.その後,プルーニング後のVSOB(P-VSOB)ネットワークに通常のbanyanネットワークを追加した新たなスイッチネットワークを提案した.このネットワークのために開発したO(logN)のルーティングアルゴリズム(PRF RS, PFR LS)を用いることで,ブロッキング発生率をP-VSOBと比較して著しく低く抑える事に成功し,ハードウェアコストはP-VSOBとほぼ同程度に抑えることに成功した. 3,Banyan型光スイッチの性能解析のための一般的なモデルの開発.このモデルはブロッキング発生率,ネットワークの深さ,そしてハードウェアコスト間の関係を明らかにし,必要なトレードオフはこのモデルをもとに得る事が可能になった. 4.多重バックアップルータの相互関係を取り入れた場合の動的レストレーション・スキームを取り入れた光ネットワークの性能解析モデルの提案.この新しいモデルの有効性はシミュレーションで検証を行った. 5.効果的なユニキャスト・ルーティング,マルチキャスト・ルーティング,サバイバル・ルーティングのためのモバイルエージェント型アルゴリズムの開発,我々は光ネットワークで課題となっているルーティングアルゴリズムと波長割り当て問題を解決するためにモバイルージェント技術と遺伝的アルゴリズム(GA)を組み合わせた方法を提案した.このアルゴリズムは高い負荷バランスを達成し,最も有望とされていたFixed-Alternateルーティングアルゴリズムと比べてブロッキング発生率が著しく低い.これら二つは全波長変換器もしくは部分波長変換機が局所的に配置されている光ネットワークに対して有効である.低いブロッキング率と少ない遅延が保障されれぱ,我々の動的RWAアルゴリズムは現在の回線交換型光スイッチネットワークだけでなく次世代の光バーストスイッチネットワークにとって有用なものとなる. 6.我々は,効率的なマルチキャストトラフィックのためのネットワークト構造デザイン問題に基づいたネットワークコーディングを研究した.マルチキャストとネットワークコーディングの特性に基づいて,初めこの問題を非線形整数プログラミング問題(NP困難)に捉え,定式化し,そのための発見的手法を提案した.この手法の有効性は異なるトラフィックパターンの下でシミュレーションにより検証した,
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