研究概要 |
本研究では,異種混在の無線通信インフラが同時利用可能な環境において,インフラを形成する異種基地局から情報を得ることで高速かつ効率的なハンドオフや状況に応じて移動端末が異なる無線アクセス技術を同時に利用したハイブリッド無線通信によってEtoEの高速・高信頼なデータ通信を可能とするユビキタスネットワーキングミドルウェアを研究開発することである. 本年度は,(1)無線状態測定技術とトラフィック制御に関する研究,(2)移動端末間の自律協調制御に関する研究についてこれまでの成果を整理し,学術論文としてまとめることができた(各研究成果[1],[2]).特に(1)では,上位アプリケーションへ透過性を提供可能な通信制御ミドルウェアのプロトタイプを設計・開発し,異種アクセス網を介したボトルネックリンクの状態(遅延,ジッタ)の測定手法を検討した.トラフィックをパケット毎に各経路へ振り分けた場合,各経路の可用帯域や遅延,遅延揺らぎの違いによって,通信相手でパケットの到着順序の入れ替わりが頻発し,経路集約型通信の効果が得られない状況が発生する.そのため,パケットの到着順序入替わりの許容範囲を満たすように,各経路の遅延と遅延揺らぎの測定結果に基づいて到着順序の入れ替わりが許容範囲を超える可能性のある経路へパケットを振り分けない制御方式を開発することで,従来方式よりもパケット到着順序逆転を防ぐことができ,複数経路間でジッタや通信速度に差がある環境でも,安定したスループットが得られることを確認した.また,(2)では,トラフィックをフローやパケット毎にフレキシブルに制御する制御ポリシーをダイナミックに設定可能な仕組みを検討し,実環境での評価によってその有効性を評価した.その結果,ジッタの大きな経路が含まれる場合,パケットベースの分配手法では経路集約型通信の効果が得られず,フローベースの分配手法に切替えた方がよいことが判明した.本制御ポリシーの設定手法を利用すれば,経路集約型通信の目的が高速通信であればジッタの大きな経路を外し,高信頼通信であればパケットを冗長化して複数経路へ分散させるといった柔軟な制御を反映することができる.
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