研究概要 |
本研究では,ステガノグラフィの技術をベースとして,複数のマルチメディアコンテンツ(コンテナ)に分散してファイルシステムを隠す枠組みを新たに構築した.カモフラージュになるコンテンツに自然に見える形でデータを隠すステガノグラフィの手法は既に多数提案されているが,そこで対象とされていたのは単一のコンテナのみであった.本研究では,複数のコンテナに分散して埋めこみを行うことで,実用的なサイズのファイルシステムを自然な形で隠すことを可能とした. これまでに本研究で開発したファイルシステムは,プラグイン構造をとっており,プラグインを別途記述することで,さまざまなコンテナをその種類に関わらず扱うことができるようになっている.また一旦作成したファイルシステムに新たなコンテナを追加することでファイルシステムを拡張することができる(研究発表[1]).ただし,ファイルシステムは外部からのコンテナへの改変に対する耐性を備えていない. 平成18年度はファイルシステムに頑強性をもたせるための研究を行った.現在はファイルシステムを構成する各コンテナがもつデータには冗長性がないため,一つコンテナを失うだけでファイルシステムの少なくとも一部は利用不能となる.そこで本研究ではミラーリングで頑強性をもたせることを検討した.埋め込むデータをブロック化して,同じブロックがn個存在するようにして,コンテナ集合の各要素に他の要素へのリンクとなるデータを冗長に埋め込んでおくことで一部のコンテナが改変されてもファイルシステムの維持が可能になる.また冗長度が少なくなったブロックを復元する仕組みも導入することで,ファイルシステムに頑強性を与えられると考えられる.
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