研究概要 |
本年度の研究では,昨年度検討し,実装した作業意欲の向上を目指すエンタテインメントシステムにおける問題点の考察とさらなる拡張を実施した. まず,作業者の主観的な作業量(邁進量)の計算を改善するため,ユーザの作業能率に関する基礎研究を進めた.特に,本システムにおいて重要な,ユーザに対して情報を提示した際の作業者への悪影響に関する研究を進め,従来のキーボードのみならず,マウス操作をメインとする作業においても同等の影響をユーザが受けることが示された. また,5週間にわたる実験により,キーボード打鍵速度の向上を見ることができた.このことは,これまでは明確に示すことができなかった作業意欲の維持向上に従って作業能率も同時に向上することを示していると考えられる. これに加えて,半年間にわたる適用実験により,本システムに対する「飽き」の影響が強く現れることが示された.これに対する対策を検討し,飽きの原因として,エンタテインメントの多様性が期間の長さに対して不足していることをあげ,この問題に対応するために,歌謡曲に代表される,世の中に広く好まれているエンタテインメントである音楽をシステムに導入する手法を提案,評価を行い,ユーザの主観的評価では多様性が高くなったという結果を得た.また,本研究を拡張し,これまではデスクワークに限っていた対象作業を拡張し,一般に継続意欲が低下しがちな日常的運動(健康増進を主たる目的とする)に対する適用について検討し,簡単な評価実験を行った. さらに,エンタテインメントシステムの持つ「ユーザの作業量を視覚的に・直感的に示す」という側面を特に抽出することにより,ユーザとシステムの間にReflective Designという新たなインタラクションデザインの概念を提唱した.本提案に基づくシステムについては現在プロトタイプを開発し,簡単な評価により,ユーザの行動の規範としてシステムの提示が役立つ可能性が示唆されている.
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