研究概要 |
本研究では,時間的変化を伴う位置情報(時空間データ)を対象としたデータマイニング法の開発を目的とし,その具体的な要素技術として改良型多重スケール比較法とラフクラスタリングの組合せによる時空間系列の比較類型化法を開発,実験においてサッカー記録データ,医療データ等からの知識獲得を試みた。本年度は,昨年度までの時空間データの切出・表現法に関する検討結果と基礎的類型化実験の結果を受けて,(1)低スケールにおける系列細部の表現性に富む修正ベッセル関数の導入,(2)部分系列間相違度への速度項の導入,(3)対応部分系列の属性値差に基づく総系列間相違度の導出,(4)類型化に用いるラフクラスタリングに関する改良,を中心的に実施し,方法の洗練化につとめた。その結果,昨年度問題であったクラスタ内の均一性の低さが大幅に改善され,特にパス回しの複雑さに関して差異を明確化し,複雑なパス回しからのゴール,シンプルなサイドチェンジを伴うゴールなど,興味深い特徴をより明瞭に反映するクラスタが生成可能となった。この成果を第10回ラフ集合・ファジイ集合・データマイニング・粒状計算に関する国際会議及び第5回複合知能システムに関する国際会議で発表した。また,クラスタリング法の改良については日本ファジイ学会ラフ集合専門部会において発表した。さらに,開発手法を医療データに応用し,複数の時系列検査値を軌跡表現して比較類型化する手法を考案して第25回医療情報学連合大会に於いて発表し,特集論文への推薦を受けるなど高い評価を得た。
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