研究概要 |
本研究は,利用者が探していると予測されるような情報,商品,対象などを見つけ出すために利用する推薦システムの研究を行う.特に,「口コミ」の原理で推薦をする協調フィルタリング手法に,従来利用されていたSD法に代えて,順位法を用いた手法を扱う. 本年度は実験計画に従い以下の2点について研究を行った: 1.順位法を用いた協調フィルタリングにおいて,利用者一人につき複数の順序応答を利用できる手法を考案し,本研究以前に収集した寿司についての嗜好データと,昨年度に収集した新聞記事への関心についての調査データに対して実証実験を行った. 順位法の導入により,利用者の違いやサンプル時期による嗜好パターンの揺らぎを抑制できる.しかし,一度に非常に多数の対象を整列することは困難なので,順位法では,収集可能なサンプル数が厳しく制限される問題があった.この問題点の解消のため,利用者一人が,異なる対象の集合を,それぞれ順序付けするようにして,多数のサンプルを収集できる枠組みを導入する.しかし,異なる順序列中の対象間の嗜好の強弱の情報が失われるという新たな問題点を解消する必要が生じた.本年度は,この問題に対処するため,複数の順序応答を一つに集約する修正平均期待順位法を開発した.この集約手法を,既存の順序協調フィルタリング手法に組み込む改良を行った.本手法により,採取したデータを用いて,複数の嗜好順序の利用で,推薦の予測精度が向上させた.結果は国内研究会にて発表するとともに,国際会議にも投稿中である. 2.推薦システムでは,利用者間の嗜好パターンの類似性とともに,推薦対象そのものの特徴も利用することが有効であることが知られている.そのため,推薦対象の情報から利用者の嗜好を予測する問題を教師あり順序付け問題として定式化した.この問題についても改良を行い,その成果を国際会議等にて発表した.
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