研究概要 |
移動体追跡や3次元幾何モデリングで用いられるLevel Set Methodは,曲面の分裂や結合など位相変化への対応が容易であるという,Snakesなどの従来の動的輪郭モデルと比較して優れた特徴を有する.しかし,この手法は初期化や更新時の計算コストが高く,リアルタイム性が要求されるアプリケーションには不向きであると考えられてきた.これに対し,我々はこれまでに高速で安定なLevel Set Methodの実現方法としてFLSM (Fast Level Set Method)を提案し,ビデオ画像上での複数移動物体の実時間追跡実験を行ってきた.本研究はこれを3次元空間におけるトラッキング問題へ拡張し,隠れに頑強な実時間3次元モーションスキャナシステムを構築することを目的とする.本年度は,昨年度に構築した複数台のステレオカメラとPCクラスタを用いた3次元FLSMモーションスキャナシステムに対し,Myricom社製Myrinetを用いた高速通信ネットワークを新たに導入した.この結果,最大69ms必要であった各計算機間での通信時間が4ms程度に抑制でき,人体3次元形状のリアルタイム構築処理が可能となった.また複数人体形状の同時再構築実験を行い,シーン内の複数の人物が存在する場合でも分離して3次元形状が復元でき,システムが設計通りに動作することを確認した.さらに本システムを用いて民族神楽の保存に向けた予備実験を行い,着物の模様などの見えと舞踊動作を同時に記録,再現できることを確認した.
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