研究概要 |
本年度は,自己組織化マップの識別能力向上を図るために,データ集合内での非線形距離測度系構築に関して研究を行った.具体的には,カーネル法と部分空間法を適用してデータの分布を近似する方法,データ集合の分布をグラフで近似して距離系構築を行う方法を提案した. カーネル法では,カーネル関数と呼ばれる関数を用いて,パターン空間をより高次の空間内で再表現する.これにより元々の空間では分類できなかったパターン集合が,再表現された空間では分類可能なものとなる.また,部分空間法では,代表ベクトルの代わりに複数の基底ベクトルで張られる部分空間を利用することにより,パターンの変形に頑健な分類を実現する.カーネル法と部分空間法を融合することで元々の空間における非線形な部分空間が形成できる.実問題では,同じクラスに属するデータの分布が,線形部分空間上に分布することは少なく,非線形な部分空間手法は非常に有効である. また,カーネル法では,カーネル関数の設計法が確立されていない問題があるので,データ分布をグラフにより近似し,グラフ上の距離に基づいた非線形距離を採用する手法を提案した.この手法は,データ分布や構造が未知の場合でも,データ間の局所的な距離を適切に反映したグラフを利用することで,データ空間内に適切な非線形距離系が構築される.人工データを利用して,学習性能などの基礎的なシミュレーションを行い,その有効性を示した. 昨年度提案したフィードバック自己組織化マップの改良版と,上記の非線形距離に基づく自己組織化マップを融合する研究を現在進めている.これまでの基礎的なシミュレーションでは,両者の特長を損なうことなく時空間パターンの識別を実現しているので,頑健な時空間認識器の可能性を示していると考えられる.
|