研究概要 |
研究の最終年度となる平成18年度においては,ロボットの誘導をおこなう際に有効となる学習アルゴリズムに関して研究をおこなった.ロボットが部屋の中を自由に移動する場合には,外界の環境だけでなく,外界での出来事を瞬時に学習する必要がある.そのような学習機能をもつ数理モデルとして,相関型の連想記憶モデルが知られており,市販のロボットにも既に搭載されている.ただし,このモデルは,回路の素子数nに比例する記憶容量をもち,その容量を超えると,それまでに覚えた事項すべてが想起できなくなる.この現象は「カタストロフィック忘却」と呼ばれている. そこで,その問題を回避する手法を開発した.具体的には,回路を構成する素子どうしが互いに他の素子と結合している場合について考えた.また,一つの出来事を記憶することに,ある一定個数の素子について,それらの素子に関わる結合係数をゼロにリセットする機能を回路に取り入れた.その結果,次の成果が計算機実験により得られた. (1)回路全体としての記憶容量は少なくなるものの,最近学習した記憶事項にっいては安定に保持することができる. (2)素子が置き換わる場合には,その最適な置き換わり個数が約3.2個と,回路を構成する素子数とは無関係に決まる. カタストロフィック忘却を避ける方法としては,別の手法もあるが,(2)の結果は,他の手法からは導けない不変量の存在を示しており,今後,理論的な研究が必要である.
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