研究概要 |
医・生物学の分野では,カウントや二値といった離散型応答データがよく扱われる.このような離散応答変数に対するモデルとして,1次元の場合はポアソン分布やベルヌーイ分布を仮定したもの,または個体差を考慮したポアソン・ガンマモデルが使われている.さらに"繰り返し測定データ"など複数個の応答データを同時に扱う場合には,相関構造を考慮した多変量的な解析が重要となる.このような相関を伴う多変量離散型応答データに対しては,多変量ポアソン対数正規モデルや多変量ベルヌーイロジット正規モデルなどがこれまで提案されている。これらのモデルは,統計的に扱いやすい多変量正規分布をランダム効果として導入することで,相関構造および超過分散を取り込んだモデルである.これらの確率密度関数は多重積分の形で表されるため,従来は数値積分やMCMCなどが適応されてきた.そのような数値的最適化に基づく方法は扱う変量の数が増えるにつれて計算量が膨大になり,データ解析は容易ではない.本研究の目的は、扱い易い新たな多変量離散モデルを構築して,容易にデータ解析に適用可能な手法を開発することである.新たな多変量離散分布の構築には,まず一般化線形混合モデルの確率密度関数を近似評価した.得られた近似公式は,ある条件のもとで確率密度関数の性質を満たしている.これを用いて多変量離散分布を定義した。未知パラメータの推定には最尤法を適用し,相関・超過分散といった共分散構造の尤度比検定についても議論した.また,数値実験を行い提案する分布の数値的振る舞いを検証した.
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