研究課題
若手研究(B)
全ゲノム配列が決定された183種の微生物を対象として、それぞれの微生物でのリーディング鎖とラギング鎖上における遺伝子の分布の比較を行なった.Proteobacteria門、firmicutes門(低GCグラム陽性細菌)、Actinobacteria門(高GCグラム陽性細菌)におけるリーディング鎖に存在する遺伝子の全遺伝子数に対するそれぞれの割合は、49〜67%、51〜87%、53〜73%であった.これらのうち、低GCグラム陽性細菌であるFirmicutes門では偏りが特に大きく、Baclllales網が75.7%、Lactobacillales網が78.8%、Clostridia網が82.9%、Mollicutes網が69.0%であった.そこで、遺伝子の重複と偏りとの関係を調べるために、全遺伝子についてオルソルグとパラログの関係を計算し、それらの遺伝子のDNA鎖上における偏りの程度を調べた.オルソルグ遺伝子は、各網における微生物群の全遺伝子のアミノ酸配列の類似性が高いものを単結合法によりクラスタリングし、各網における全微生物で保存されているものと定義した.パラログ遺伝子は、ある生物種内で重複しているものと定義した.さらに、オルソルグ遺伝子は、重複がないものと有るもの(パラログ化したもの)に分類した.この結果、重複がないオルソログ遺伝子のリーディング鎖への偏りは、Proteobacteria門、Firmicutes門、Actinobacteria門で、それぞれ35〜84%、59〜98%、67〜97%であり、殆どの微生物においてリーディング鎖に存在する遺伝子の偏りよりも大きかった.Firmicutes門では重複がないオルソログ遺伝子の偏りは特に大きく、Bacillales網では94.4%、Lactobacillales網で91.2%、Clostridia網で94.2%、Mollicutes網で76.5%であった.また、Firmicutes門に属するMollicutes網において、オルソログ遺伝子のリーディング鎖への偏りが他のFirmicutes門における微生物よりも低い原因の一つとしては、重複がないオルソログ遺伝子のリーディング鎖への偏りが小さく、パラログ遺伝子も少ないことが考えられた。なお、Chlamydia門のChlamydophila felis/C-56株の全ゲノム配列決定に携わり、Chlamydia門におけるオルソログ解析を行なった.
すべて 2006 2005
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DNA Research 113
ページ: 15-23
Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 102
ページ: 13272-13277