研究課題/領域番号 |
16700295
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経科学一般
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩井 陽一 独立行政法人理化学研究所, 神経回路発達研究チーム, 研究員 (40332332)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2005年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2004年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | 臨界期 / 視覚野 / 暗室飼育 / 抑制性伝達 / GABA / ベンゾジアゼピン / GABA受容体 / GABAトランスポーター / 抑制伝達 / ベンゾジアゼビン |
研究概要 |
大脳皮質は生後の経験に依存して発達し、臨界期に極めて柔軟になる。GABA_A受容体の作働薬を暗室下で注入する実験から、持続性抑制が臨界期を誘導することをこれまでに示した。本研究ではその生体内の分子基盤を追究した。 25年以上前の複数の生化学実験はGABAの取り込み活性が成熟期前に独特のピークを示すことを報告していたが、その生理的な意義は依然として分かっていない。細胞内にGABAを取り込む分子ファミリーの発現を調べたところ、ニューロン型(GABAトランスポーター1;GAT-1)の存在量が生化学的な取り込み活性と良く対応していた。GAT-1は臨界期前に豊富だが、齢成熟に伴い顕著に減少した。GAT-1の細胞内局在を観察したところ、臨界期前では抑制性ニューロンの神経終末だけでなく細胞体にも異所的に分布していることが分かった。 次に、臨界期前の過剰なGAT-1が臨界期開始を制御することを検証した。GAT-1欠損マウスは早熟な臨界期を示し、可塑性は速やかに失われてしまった。さらに、臨界期が遅れるマウスモデルでさえもGAT-1の機能喪失は臨界期を早めることが分かった。GABA合成酵素のシナプス型を欠損したマウスは臨界期の開始が遅れるが、視覚野にGAT-1の阻害剤を注入すると速やかに強い可塑性を回復できた。また、暗室飼育は野生型マウスの臨界期を遅れさせるが、GAT-1欠損マウスは暗室下で視覚経験を受けていないにもかかわらず、臨界期の終了が早まった。興味深いことに、GABA_A受容体作働薬の注入も暗室飼育下で臨界期を早く終わらせる別の方法であるが、この処理も発達過程で見られたのと同程度にGAT-1を減少させた。なるほど、GAT-1の減少を模造するGAT-1欠損ヘテロマウスでも早熟な臨界期を確認できた。以上の結果は、GAT-1発現は臨界期開始を遅れさせる‘ブレーキ'として働いていることを示している。
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