研究課題
若手研究(B)
老化促進モデルマウスの一系統であるSAMP10マウスは、加齢に伴う脳機能障害を呈し、病理学的には前頭部大脳皮質の萎縮を特徴とする。本系統マウスでみられる神経変性過程への酸化的ストレスとミトコンドリア異常の関与につき、in vitroの系で解析することを目的として本研究を開始した。昨年度に無血清培地を用いた培養系を確立し、純度の高い神経細胞集団が得られるようになったが、さらに長期間にわたりastrocyteの増殖と突起伸展を抑制する目的で、Lucius Rら(1995)によるsandwich培養の手法を一部改変し導入した。(1)この手法を用いると、28日目まで培養の純度を90%以上に保つことができた。(2)この方法を用いてin vitroでの生存率をSAMP10由来の細胞とコントロール系のSAMR1由来の細胞との間で比較したが、28日目まで有意な差はみられなかった。(3)28日目までの細胞あたりの酸化的ストレスレベルを蛍光プローブを用いて測定すると、21日目まではSAMP10由来の細胞でSAMR1由来の細胞に比べてややROS量が多い傾向がみられた。(4)ミトコンドリア膜電位の変化については、細胞株ごとの変動が大きく、一定の傾向は得られなかった。(5)グルタミン酸刺激に対する反応は、10μM以上の負荷で細胞死が観察されたが、その感受性に有意な系統差はみられなかった。加齢による神経細胞障害のモデルとしては、単回で細胞死に至る強い刺激を負荷するより、単回の負荷では死に至らない弱い刺激を繰り返し与える系の方がよりin vivoの条件に近いと考えられる。今後この培養系を用いて、興奮毒性やプロテアソーム阻害、酸化的ストレス等様々なストレス負荷をsublethalなレベルで慢性的に与えた際の細胞の反応の違いについてさらに検討する予定である。
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