研究概要 |
1.背景・目的:2006年2月に英国において携帯メールの打ちすぎで障害を持つ人が380万人に達する報道がなされるなど,近年さらに懸念されている反復運動過多損傷においては,血流状態が重要な要因であるとされている.筋や腱の使われ方を血行動態も含めて観測できる近赤外分光法(NIRS)による作業管理システムの構築を目指し,本年度はシステムの測定精度の向上と作業管理法の指標などについて検討した. 2.定量化のための理論解析:腱鞘炎の検出・診断を目的とし,長母指外転筋腱・短母指伸筋腱・腱鞘の組織を通過する光の光路長を理論解析より求め,実測における定量化につなげた. 3.非接触NIRS:被験者の負担を減らし,簡便に計測が可能な非接触式の組織酸素濃度計測装置を試作し,前腕部を対象とした酸素消費量計測を行い,妥当な測定値を得ることができた.しかし,プローブ-皮膚間距離の把握と補正など煩雑な面もあり,実用上の改良の余地がある. 4.実測と評価指標の検討:新たに試作した手首用の小さな光プローブ及び非接触プローブを用いて測定し,理論解析結果を使ってヘモグロビン(Hb)濃度を定量化した.血液量の増加と脱酸素化Hb濃度の増加量を監視することで,ある程度作業の強度を管理できることが示された.また,健常時からの差異が定量的に観測できるので診断にも有効と考えられる. 5.まとめ:過剰な作業による局所的な酸素不足や血液量の増減を定量的にモニターし,作業管理に応用できる可能性を示すことができた.今後,Hb濃度の変化量だけでなく絶対量計測を可能とし,非接触または微小接触で実現することで,システムの有効性・実用性をさらに向上できる.
|