研究概要 |
本研究では非線形光学効果によりコラーゲンから特異的に発生する第2高調波光(SHG光)を観測する顕微鏡を開発し,培養組織中コラーゲンの評価法を確立した.従来のコラーゲン観察法では試料の固定や染色が必要であるのに対し,本顕微鏡は無染色・非侵襲の観察が可能であり,同一試料の経時観察や細胞-コラーゲン間の相互作用の動態解析などに応用できる. 本研究で開発したSHG顕微鏡は共焦点レーザー顕微鏡を改造し,モード同期チタン・サファイアレーザーを光源としたものである.透過配置の光電子増倍管で入射レーザー光の半波長のSHG光を,反射配置の光電子増倍管で2光子励起の蛍光をそれぞれ検出して,コラーゲンと細胞をイメージングした.測定試料には培養線維芽細胞を包埋したI型コラーゲンゲルを用いた. 観測したSHG顕微鏡画像からコラーゲンの定量的評価指標を得るために,コラーゲンゲルを用いてSHG光強度とコラーゲン構造の関係について検討した.ゲル中のコラーゲン濃度が高くなるとSHG光も比例して強くなった.また,圧縮によりコラーゲンを配向させたゲルからはより強いSHG光が発生した.これらの結果はSHG顕微鏡画像を用いてコラーゲンの量と質を定量的に評価できることを示している.さらに,細胞によるコラーゲンゲルの再構築過程についても検討した.コラーゲンゲルから発生するSHG光強度は細胞の培養期間に伴って増加したことから,培養組織の品質評価にSHG光計測が有効であることが確認できた.
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