研究概要 |
脳血管構造解析に関しては,領域拡張法で抽出した血管領域に対して細線化を適用することで得られる芯線情報に基づいて構造記述を行う手法について検討を行った.具体的には,芯線情報から得られる分岐点と端点の二種類の特徴点に着目して分岐点,端点の座標,二点間の経路情報などを保持したデータ構造を用いて大局的な構造記述として血管領域の記述を行った.そこで記述した血管構造と実際の脳血管を対応付けることにより,画像データ上で血管部位が特定できるだけでなく,動脈瘤の好発部位といった臨床上の知見を用いることができるようになった.さらに突起が高い嚢状動脈瘤については,この構造記述における分岐点と端点間の距離が短い枝として検出できることが分かった. そこで,構造記述から得られる短い枝と好発部位による解析範囲の絞り込みによって動脈瘤の候補領域を検出し,候補領域の特徴量分析によって偽陽性候補を削除することで,動脈瘤の検出を試みたところ,44例の頭部MRA画像(動脈瘤有り21例,無し23例)に対し,短い枝として検出できる嚢状動脈瘤に対しては検出感度100%(全体では66.7%)で症例あたりの平均偽陽性数は1.5個という結果が得られた. 一方,今後の展開としてはデータベースや手法の統一化を進めていくことが必要となるが,先の大局情報からのアプローチとは別に,局所情報から動脈瘤候補を検出する手法についても検討を行ってきた.そこでは,ノイズの影響が大きい局所的な曲率情報を投票操作によって統合し,投票数による多数決によってノイズの影響を軽減して安定に動脈瘤候補を検出することを試みた.その候補から特徴量分析による偽陽性除去を行い,動脈瘤を検出した結果,2から15mmの動脈瘤を持つ13症例,持たない16例に対し,検出感度100%で平均偽陽性数1.14個という結果も得られた.
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