研究概要 |
作業療法で用いる様々な作業活動を行う際に,脳内のどの部位に,どのような変化が生じるのかを明らかにし,作業療法訓練前後でその変化を比較することは,作業療法のエビデンスを確立するために非常に重要な課題である。我々は脳磁場計測(MEG)と機能的近赤外イメージング装置(fNIRS)を用いて,作業活動の種類による脳内賦活特性の違いを明らかにするための第一段階として,作業種目の違いによる脳内準備電位の時間的空間的変化について調べることとした。まず,MEGについては測定準備,測定,解析に熟練を要するため、同学高次脳センターの協力を得て,MEGにおける基本的パラダイムを用いて測定と解析を繰り返し,一連の測定準備,測定,解析技術を習得した。さらに今年度は,単関節運動(手関節背屈)と複合関節運動(前方リーチ)について,自発的条件での運動誘発電位の比較を行った。測定回数は筋電図onsetにて,一条件一セットの有効データ数を50回として,3セットの測定を行った。その結果,自発的条件特有の運動準備電位と考えられる波形を得ることができ,さらに,MEG測定における高難易度課題であるリーチング動作での有効データを得ることが可能となった。今後は,統計的解析が可能な有効データ数を蓄積し,結果を吟味したうえで成果を報告したいと考える。また,リーチング動作時のMEG測定が可能となったことによって,様々な操作対象にリーチする段階での脳内準備電位を比較することが理論的には可能であり,次の段階での課題であると考えている。一方,今年度は,島津製作所の協力でfNIRS(島津製作所製マルチチャンネルOMM3000)を使用することが可能となり,MEGが不得意とするダイナミックな活動時の脳内活動の変化を研究対象とすることが可能となった。fNIRSを用いた研究成果は第45回日本生体医工学会(2006年5月15-17日)などで発表したほか,第41回日本作業療法学会(2007年6月22-24日)でも発表予定である。
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