低反応レベルレーザー治療は疼痛の抑制治療法として、星状神経節ブロックや各末梢神経軸索への照射に汎用されている。神経ブロックに作用する点から神経伝導の素子である電位依存性Na^+チャンネルに何らかの影響が与えていると推察されるが、その生理学的機構については不明な点が多い。現在、複数のNa^+チャンネルアイソフォームがクローニングされているが、低反応レベルレーザー照射の影響がアイソフォームに特異的であれば、チャンネル蛋白に直接的な影響が生じていることが示唆される。そこで、本研究では、これらのアイソフォームをそれぞれHEK293細胞に再発現させ、パッチクランプ法の全細胞電流計測により、低反応レベルレーザー照射の影響におけるアイソフォーム間での差異を検討することを目的に実験を進めた。本年度は再発現系におけるチャンネル蛋白の発現の確立とパッチクランプ計測における低反応レーザー照射法の再現性の確立に努めた。 HEK293細胞の再発現に関しては、Na_v1.2、Na_v1.3、Na_v1.4、Na_v1.5の再発現を試み、Na_v1.2、Na_v1.4、Na_v1.5についてはチャンネル分子の主要機能を有すαサブユニット単独でも実験に十分なNa+電流を確認できたが、Na_v1.3についてはチャンネルの細胞膜への輸送を促通すると考えられているβサブユニットを共発現させても、チャンネル発現が確認されなかった。 パッチクランプ法計測における顕微鏡チヤンバー内の細胞への照射法に関しては、臨床的に用いられる直接的な照射では、焦点距離等によるバイアスが多く、アイソフォーム間の感受性を比較するのには不適切であることが判明した。このため、顕微鏡の蛍光システムを代替したレーザー照射システムの作成により、細胞に対する均一な照射を試みている。
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