研究概要 |
本年度は,2型糖尿病患者における血管機能および運動筋酸素動態機能の検討を行い,運動療法による各要因の影響を明らかにする目的で以下のとおり実施した. 1)血管機能を検討するために,2型糖尿病患者69名(男性26名,女性43名,平均76歳,平均BMI23.9,平均HbA1c6.3%)および非糖尿病患者126名(男性44名,女性82名,平均77歳,平均BMI22.9)を対象に,足関節上腕血圧比(ABI)および心臓足首血管指数(CAVI)を測定した.その結果,非糖尿病群では,平均CAVI値9.8m/s,平均ABI値1.1,糖尿病群ではそれぞれ,10.3m/s,1.1であり,CAVI値が有意に高値(P<0.05)を示し,大動脈および下腿動脈を一体とした広域血管の糖尿病による機能的変化が明らかとなった. 2)2型糖尿病患者16名を対象に運動療法を3ヶ月間実施した.運動処方は心肺運動負荷試験に基づいて行い,運動強度を50%最高酸素摂取量,運動頻度を週3回とした。運動負荷試験時に近赤外分光装置を用いて酸素化ヘモグロビン(OxyHb),脱酸素化ヘモグロビン(DeoxyHb),全ヘモグロビン(TotalHb ; OxyHb+DeoxyHb),筋酸素飽和度(StO2;OxyHb/TotalHb)を同時に測定した.3ヶ月の運動療法の結果,HbA1cが有意に改善(7.1%→6.8%,p<0.05)したが,運動耐容能(24.8→24.9ml/kg/min,p=0.92)および安静時および運動時筋酸素動態に有意な変化を認めなかった. 以上の結果より,2型糖尿病患者では同年代と比較して血管機能の変化を認めるとともに,定期的運動により血糖コントロールが改善するも,運動筋の血管機能および酸素利用動態への影響が少ないことが示唆された.
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