対象の状況変化に合わせ力を適切に対応させるという力の調節能力の評価項目として、力の源である筋活動能力と遂行能力(パフォーマンス)の2つを取り上げ、これらを同時に見る方法を考案し基礎的データを収集した。対象の状況変化を等速度にて直線的に増加する標的で表し、等尺性収縮にて力を出力しこの標的を追従するという単純化した課題を用いた。その時の筋活動能力は表面筋電図法を用い計測し、力とS-EMGの振幅(包絡線)との関係を異なる出力率間で比較した。また、左右の上肢を比較することで調節のうまさについて検討した。昨年度までは、被験筋を左右の第一背側骨間筋(以下FDI)とし再現性を含む基礎的データを収集し検討した。今年度は、FDIと異なる働きを要求される上腕二頭筋(以下BB)を被験筋とし、女性健常成人11名(平均年齢20.7±0.5)の筋活動能力と遂行能力を測定した。このうち8名について同条件にて後日2回目の実験を行った。課題はオシロスコープ上に提示された指標に沿い随意的に、2.5秒にて最大筋力の60%まで10%刻みにて6段階の指標を設定し、おのおの直線的に力を発揮させた。その結果から、指標と発揮された力の誤差と実際の出力とS-EMG(包絡線)の相関関係を分析した。1.遂行能力では、異なる出力率間での違いが、2回目の右において3名にみられた。左右差は、1回目は11名中2名に、2回目では8名中3名に見られた。さらにBBの方が、FDIより左右差が出現した割合が低かった。2.力とS-EMG相関関係(回帰直線の傾き、相関係数)は、第一背側骨間筋と同様、右では1回目と2回目で、回帰直線の傾きの変化および相関係数は同様な傾向を示した。その一方で、左では両者で異なる傾向を示し左の再現性が低い傾向を示した。引き続き本評価法の信頼性と妥当性の検証するために、さらに被験者数を増やし検討する必要性がある。
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