研究概要 |
【目的】 蛋白同化ホルモン(AS)投与により筋力が増加したという報告がある。昨年の研究では,AS投与前のFIMM点数が高ければ,投与後の筋力増加割合が高い傾向があり,日常活動量によりASの効果が異なることが示唆された。しかし,脳卒中患者の場合は麻痺側筋力が測れないことが多い。今回我々は,AS投与を行った脳卒中片麻痺患者において筋断面積と筋力を測定し,データの互換性を検討した。 【対象】 2005年2月から10月に当院回復期リハビリ病棟に入院した脳卒中片麻痺患者中,同意を得られた男性8例(平均年齢60.1±15.0歳,脳梗塞2例,脳出血6例)。重度の感覚障害,失語,糖尿病,肝障害症例はあらかじめ除外した。 【方法】 全例FIT (Full-time Integrated Treatment)プログラムに加え,エナント酸メテロノン100mgを週1回計6週筋肉注射した。バイオデックスで膝伸展筋力(角速度60°/秒,以下体重あたりの%としてKM)を毎週測定した。同時に大腿長中点における筋断面積をCTにて2週毎に計測し,筋力との相関,経時的変化率を分析した。 【結果】 筋力とそれに対応する筋断面積の相関はR^2=0.588であった。断面積の経時的変化では,平均増加量は麻痺側703mm^2,非麻痺側1560mm^2と麻痺側非麻痺側ともに有意に増加したが,増加率は非麻痺側のほうが有意に高かった。 【考察 】 今回の結果より,下肢筋断面積はASの効果判定に有用であることが示唆された。麻痺側筋断面積の増加率が低かったことは,下肢使用量の差による可能性がある。
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