研究概要 |
廃用性筋萎縮の進行を効果的に予防するための理学療法手段を確立することを目的とした実験を行った。廃用性筋萎縮の実験モデルである後肢懸垂を実施する前にトレッドミル走行をラットに負荷し,その後の廃用性筋萎縮の進行に及ぼす効果について検討を行った。 8週齢のWistar系雄ラット(24匹)使用し,1)対照群(以下,CONT),2)2週間の後肢懸垂群(以下,HS),3)トレッドミル走行後に2週間の後肢懸垂を行った群(以下,Ex-HS)の3群に分けた。実験終了後,ヒラメ筋を摘出し,凍結固定した。凍結横断切片を作成後,ミオシンATPase染色,アルカリフォスタファーゼ染色を施し,線維タイプごとの筋線維直径,線維タイプ構成比率,毛細血管/筋線維(C/F)比を計測した。また,プロテインアッセイ法により単位タンパク質量を吸光度計にて測定した。 その結果,1)線維直径:CONTと比較し,HSとEX-HSはType I,II線維ともに有意に減少したが,Type I線維はEx-HSがHSよりも有意に大きかった。2)線維タイプ構成比率:CONTと比較し,HSだけTyper IIの比率が有意に増加していた。3)C/F比:CONTと比較し,HSだけが有意な減少を示した。4)タンパク質量:HSはCONTの53.5%になり,有意な減少を示した。しかしEx-HSはCONTの81.3%となり,HSと比較して有意に高値を示した。 また,後肢懸垂の期間を1週間と設定し,同様の実験を行ったところ,その場合もEx-HSとHSには有意な差が認められた。 これらの結果から,安静臥床前に運動負荷を行うことでType I線維の萎縮進行と速筋化が抑制されており,さらにはC/F比,単位筋原線維タンパク質含有量の減少も抑制されていた。従って,安静臥床に陥る前に運動負荷を行うことで,その後の廃用性筋萎縮の進行を予防出来る可能性があることが示唆された。
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